猫とゆーれい

ジャンル:私

5-3=2

 

 東方神起が再始動してから最初のライブツアーが終わり、2週間弱が経った。

 ドームいっぱいに広がるペンライトの赤い光。

 その中のひとつが私だった。

 

 東方神起という名前を全く聞いたことがないという人は、もうあまりいないのではないかなと思う。

 周囲の人に「東方神起のライブに行く」と言うと、何人かから「人数減っちゃったとこ?」と返された。間違っていない。「そうそう」と笑いながら「2人になってから結構経つんだよ」と返事をし、具体的にどれくらいなのかは自分でもよく分かっていなかった。調べたら7年前だった。もうそんなに経つのか。

 

 最初に好きになったとき、東方神起は5人だった。誰が推しとかはあまりなく、5人の歌やパフォーマンスが好きだったし、5人がみんなで楽しそうにしているのが好きだった。お金の無い学生なりにシングルやアルバムを買っていた。ライブDVDを見ていた。実際にライブへ参加したこともある。

 めちゃくちゃ熱中していたというほどではないけれど、好きだった。

 

 だから、5人が2人と3人に分かれ始めたときのことは憶えている。様々な事実と憶測がファンの間で流れて揺れて、不安とか悲しさとかそれでも信じたい気持ちとか、激励するように懇願するように、5人を好きな人たちが色んなことを言った。

 そんなときに発売された曲は、まるで腫れ物に触るように作られているみたいだった。何も無いわけがないことは向こうもこっちも分かっていて、なのにまるでこれが今までと同じ普通であるかのように差し出してきた。

 ああもう多分色んなことがダメなんだろうなと、思ってすぐ、5人は活動を止めた。

 

 5人が2人になって、もう7年が経っているらしい。

 5人の東方神起が好きだったから、2人になってからの東方神起を応援しつつも、以前ほどは興味が持てなかった。新しい活動が始まるまで少し時間が開いて、その間に別のことへ関心が移っていたというのもある。

 東方神起の名前をまた聞けたこと、そのとき見ていたドラマの主題歌に復帰後初の曲が使われたこと。安心したし嬉しかったし、曲も聞いたしテレビに映る姿も見ていたけど。なんならライブにも誘われて行ったけど。自分で買ったことはなかったなあ。だから実感が無かったのかもしれない。

 

 2人の兵役のため、東方神起が二度目の活動休止をしたのが2年半前。

 私の近くにいた2人のファンは、兵役の間も熱心に2人を追ってはニュースを届けてくれていた。お休みの日にどこへ行ったらしいとか、成績が良くて表彰されたらしいとか、色々。でも私は別段興味がないので、ふうんとかへえとか、そんな態度。そうやって曖昧な返事をしている2年半の間に、2人の彼らはめちゃくちゃ恰好良くなって帰ってきた。

 

  10月のミュージックステーションで見た『Why? (Keep Your Head Down)』は本当に本当に衝撃的で、何のためらいもなく彼らが好きだと思った。曲の最初、ふたりが向き合って手を合わせるところ。一瞬見せた笑顔をすぐに曲の世界へと戻したユノ。そんなユノを優しい笑顔で見返すチャンミン

 パフォーマンス後、タモリさんの後ろで嵐のメンバーが何やら褒めていてくれたのも嬉しかった。嵐の皆さんありがとう、東方神起を褒めてくれて。

 

 ライブツアーにも参加した。分けてもらったチケットは東京ドームのアリーナ席。今までこんな良い席だったことはなく、初めて間近で2人を見た。初めてこんなにライブが楽しいと思った。歌もダンスもすごい。かっこいい。きれい。そして私は私の変化に気付く。東方神起が5人だった頃の曲を、5人がばらばらになってしまってから聞かなくなっていた曲たちを、私は懐かしいと思っている。

 Survivorのここ、元はユチョンが歌ってたなとか。Rising SunのMVを撮るとき、ジェジュンは足を怪我してたんだよなーとか。一人が躍ったダンスを真似するライブ恒例のSummer Dreamの流れ、いつもジュンスが最初だったなぁとか。MVのメイキングではプールに投げられてたんだよね。すごく楽しそうだった。

 

 思い出すままにいくつか5人だった頃の東方神起の歌をさかのぼり、そしてJYJの歌を聴いた。『W』。

 とても好きな曲だ。きらきらと綺麗で切ないメロディ、優しいのに切なくなる歌声、美しくかさなるハーモニー。どれもがとても好き。でもあの頃、深夜にベッドの中でこの曲を聴いた私は確かにこう思っていたのだ。「どうしてこの曲を歌うのが3人なんだろう」。これはあなたの歌だよと捧げるべきは2人の方なんじゃないか。これを歌うのは、この歌詞をことばとして発するべきなのは、2人が正しいのではないか。私は残された2人にこの歌を歌ってほしかった。

 まあ、そんな2人が引っ提げて帰って来たのは『Why? (Keep Your Head Down)』、これ以上ないアンサーなんだけど。

 

 

 最初に好きになったとき、東方神起は5人だった。誰かひとりでも欠けたら東方神起じゃなくなると思っていた。けれど、5人は2人と3人になってしまった。きっと私は奥底のところでその事実を受け入れていなかったんだと思う。5人の東方神起に戻ってほしいと思っていた。

 だけどもういい。彼らがまた5人揃うことはないだろう。東方神起が5人だったのは昔のはなし。3人が戻って来たところで以前に返るわけじゃない。今の東方神起を作っているのはユノとチャンミンの2人で、それは5人だったときの東方神起とは別物だ。

 

 

 3人には元気でいてほしいと思う。それぞれが活躍し、彼らを愛する人に愛され、幸せでいてほしいと心から思う。

 でも、もうあなたたちを追いかけることはないだろう。

 

 道が分かれ始めたときの5人って、今の私とほとんど同じ年齢なんだ。もっとお兄さんのような気がしてたよ。

 こうして見ると、若いなあ。みんな楽しそうだなあ。忘れそうになってたけど、ほんとに好きだったんだよ。ばか。

 

 

 

 

 5人を好きだった気持ちは、2人を好きな今の気持ちとは違うところに残っている。だから昔の歌も懐かしみながら聴くし、これから新しい曲が作られていくのも楽しみにしている。

 昔の好きと今の好きをちゃんと分けられるようになるまでに7年もかかってしまった。だけどまた好きになって良かった。時間が経つって悪いことばかりじゃない。あれから7年経った東方神起は、今もサイコーにかっこいい。

 

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